VOL.01

PEOPLE

YURIKO E

STYLIST

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VOL.

01

2016.11.22

井伊百合子さん

スタイリスト

「悲しい顔をして黒い服を着ていたらその悲しい感情が、逆に笑顔だったらハッピーなんだってことが、とてもダイレクトに伝わってくる。黒って、その後ろにいろんな色を抱えている色なのだと思います」

 

アルディ ノアール秋冬コレクションのスタイリングを手掛けた井伊百合子さんに、“黒”という色に持つイメージを尋ねたら、こんな答えが返ってきた。着る人の内面を強く映し出し、その人らしさを引き立たせてくれる色。だから、役者さんなどのスタイリングを手掛けるときは、黒い服を提案する事が多いという。

 

「いろんな女性がいるけれど、それぞれの人にきちんと寄り添ってくれる、人を選ばない色ですよね」

 

この日の井伊さんの装いも全身ブラック、撮影の現場でも黒をお召しになっていることが多い印象だ。

 

「わたしは黒を着ると落ち着くんです。主役である女優さんやモデルさんを引き立たせるための裏方仕事ですし、自分をフラットにしておきたいから黒を着ることが多い。逆に、色のあるものを着ると、その色が自分に与えてくる影響みたいなものを感じてしまって。黒を着ていれば、そわそわする感じがない」

 

スタイリストになる前は、洋服作りを学んでいたという井伊さん。学生時代もやはり、作品に意識を持っていきたいからという理由で、黒を着ることが多かったのだとか。そんなストイックな姿勢は、彼女が描き出す、凛とした、静謐な強さを持った女性像にも通ずるところだろう。 _dsc4370

最後に、アルディ ノアールの今後の展開について、リクエストがないか聞いてみた。

 

「ブラックフォーマルに使えるラインをもっと強化してほしいんです。突然不幸があって喪服が必要になったとき、その場しのぎで買って着ているけど……。一見主張はないけれど、よく見るとシルエットが美しい。ルールを守らなくてはならない場面でも素敵でいられる、そんなブラックフォーマルを作ってもらえたらうれしいです」

FAVORITE BLACK ITEM

左は、学生時代の井伊さんの作品。ちょうどコンパクトなワンピースが一枚作れるくらいの分量の、シルクの余り布をもらって作ったものだ。お金のない学生にとって、シルクは手のでない高価な生地。「だけどもらったものだから、わりと気楽にいろんな実験ができたんです。生地ごとわーっと洗ってしぼを作ってみたり、いろんなことをやりながら出来上がって、その感じがすごく楽しくて。今はあまり着ないんですけど、ずっと持っています」。

一方は、マルタン・マルジェラが手掛けていた時代のエルメスのコート。「マルジェラがエルメスのデザイナーに就任したとき、その素晴らしさにかなり感動して。でもその頃わたしはまだ学生で全然お金がなくて。雲の上に存在しているような服でした」。数年が経ち、自由になるお金が手に入るようになった頃、ヴィンテージショップでこのコートに遭遇。「あのときのマルジェラのエルメスが今なら買える! 黒のコートってずっと着られるし、この先もずっとその時々の自分に寄り添ってくれるだろうって、迷わず購入しました」 butsudori

(左)シルクワンピースドレス:学生時代の井伊さんの作品

(右)エルメス ヴィンテージコート:マルタン・マルジェラが手掛けていた時代のエルメスのコート

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  • 井伊百合子

    スタイリスト

    文化服装学院アパレルデザイン科メンズデザインコース卒業。在学中よりStylist Sonya S.Park 氏に師事。GINZA、ku:nel、SPUR、装苑など、雑誌・カタログ・広告を中心に活動中。